睡眠障害で悩んでいる方へ 病院は何科を受診すべきか? 症状別の選び方と治療法を徹底解説

こんにちは。
とまり木です。

夜にうまく眠れなかったり、昼間に強い眠気が続いたりすると、「病院は何科に行けばいいのだろう」と迷いますよね。受診するかどうかは症状の重さ続いている期間が目安になります。放っておくと高血圧や糖尿病などにつながるおそれがあるため、早めの受診が大切です。最近の調査では、日本人の約7人に1人が慢性的な不眠を抱えているとされ、大人だけでなく学生にも広がっています。

受診のタイミングを逃さないことは、健康に長く過ごすうえで欠かせません。軽い不眠なら内科で相談できる場合もありますが、成長期の中学生の睡眠障害は小児科や小児神経科が適しています。また、全国には睡眠障害に詳しい病院の情報がまとまっており、とくに東京の専門病院リストはアクセスの便利さから注目されています。昼間に意識が飛ぶような眠気があるときは専門検査を行う睡眠外来が役立ちますし、寝つきの悪さや朝起きられない悩みも、本記事を読めば診断までの流れと受診先の選び方がわかります。

 

  • 症状と持続期間から受診すべき診療科を判断できる
  • 睡眠外来で実施される検査内容と所要時間を把握できる
  • 東京都内で信頼度の高い専門病院を選ぶ基準が分かる
  • 学齢期から社会人まで世代別の対処法を学べる

睡眠障害で病院を受診する際は何科?

  • 睡眠障害で病院に行くべき症状とは
  • 不眠で病院に行くタイミングの目安
  • 不眠症は内科でも対応できるのか
  • 中学生の睡眠障害は何科を受診?
  • 睡眠障害におすすめの病院の選び方

睡眠障害で病院に行くべき症状とは

結論から述べると、「日常生活や社会生活に支障が生じる睡眠関連症状が2週間以上持続」した場合は速やかに医療機関を受診することが推奨されています。睡眠不足による健康リスクについて厚生労働省の睡眠ガイド2023では、睡眠時間が極端に短い状態を放置すると肥満・高血圧・糖尿病・うつ病など多岐にわたる疾患の発症リスクが顕著に高まると示されています。また、日本人の不眠症有病率は男女平均で13.4%に達するとの報告もあり、放置すれば労働生産性の低下や医療費の増大を招くことが問題視されています。

具体的に医療機関を受診すべき代表的な症状には「大きないびきと呼吸停止」「入眠に30分以上要する入眠困難」「夜間に3回以上目覚める中途覚醒」「目覚ましが鳴っても起きられない重度の朝起き困難」「日中に会話中でも意識が途切れるほどの眠気」などが挙げられます。これらは睡眠時無呼吸症候群、慢性不眠症、ナルコレプシー、概日リズム睡眠覚醒障害といった疾患が背景に潜む可能性があります。特にナルコレプシーや過眠症は発症年齢が10〜20代に集中し、学業成績低下や交通事故リスクを伴うため注意が必要です。警察庁の統計によれば、2024年上半期の居眠り運転関連事故は958件に上り、前年同期比で4.6%増加しています。

これら症状がみられる場合、受診科の目安としては「呼吸関連の症状=耳鼻咽喉科・呼吸器内科」「慢性不眠・精神的要因=心療内科・精神科」「日中過眠・意識消失=神経内科」「原因不明・複合症状=総合睡眠外来」が推奨されます。なお、各診療科の中でも睡眠医療に精通した医師を探すコツは、日本睡眠学会の専門医リストを活用することです。同リストには2025年6月時点で1,128名の専門医が登録されています。

まずは専門外来または呼吸器内科で相談し、必要に応じて多職種連携の検査体制を整えることが安全策です。

主な症状疑われる疾患優先受診科放置した場合のリスク
大きないびき・呼吸停止睡眠時無呼吸症候群耳鼻咽喉科・睡眠外来高血圧・脳卒中・交通事故
入眠に30分以上要する慢性不眠症心療内科・精神科うつ病・作業効率低下
日中に極度の眠気ナルコレプシー神経内科・睡眠外来事故・学業不振

前述の通り、症状が続くと生活習慣病リスクが跳ね上がる点に留意してください。海外コホート研究では、1日5時間未満の睡眠を続けた群は7~8時間睡眠群に比べ高血圧発症リスクが1.4倍になるとの報告があります(Journal of Hypertension, 2024)。検査費用が気になる方でも、簡易睡眠検査なら保険診療で5,000~8,000円程度から受けられるケースがあり、自己負担は比較的抑えられます。

最後に、受診前に準備しておくと診断が正確になる「睡眠日誌」「アプリでの睡眠ログ」「家族の目撃情報」などのポイントを挙げます。これら客観データは医師の問診だけでは把握しにくい夜間の呼吸パターンや周期性四肢運動といった所見の手がかりになるため、医療現場でも重宝されています。

不眠で病院に行くタイミングの目安

「どの時点で受診するか分からない」という声は多いものの、国際的な診断基準は比較的明確です。ICSD-3およびDSM-5では「週3回以上の入眠困難または中途覚醒が3か月続く」場合を慢性不眠症と定義していますが、臨床では「1か月を過ぎても改善しない段階」を受診ラインとする専門医が多いと報告されています。原因がストレスなのか身体疾患なのかを早期に判別しなければ、症状固定化により治療期間が延びるためです。

日本の疫学データによれば、令和4年国民健康・栄養調査では「ここ1か月間に十分な休養が得られていない成人」が20.6%に達しました。さらにPR TIMESが報じた世界睡眠調査(2024)では、睡眠の質に不満を抱く日本人が40%を超え世界ワーストとされています。このような背景から、日本睡眠学会は「不眠症状が2週間以上続き日中の活動に支障を来した場合には医療機関を受診」するよう啓発しています。

受診を後回しにすると、心身への悪影響は無視できません。英国バイオバンクを用いた大規模解析では、入眠障害が持続する群は循環器疾患の発症リスクが26%上昇したと報告されました。また、2024年に発表されたメンデルランダム化研究では「ベンゾジアゼピン系睡眠薬の長期服用者は非使用者に比べ心血管イベントリスクが高い」と警告されています。こうしたエビデンスは、自己判断で市販薬や処方薬を漫然と継続する危険性を示唆しています。

市販の睡眠改善薬やアルコールで対処し続けると依存や耐性を招く恐れがあるため、2週間以上使用しても効果が乏しい場合は専門医の診察を受けましょう。

受診準備として「睡眠日誌の記録」「スマートウオッチによる睡眠ログ」「夕食・カフェイン摂取時刻のメモ」を用意すると、医師は生活習慣の問題点を具体的に把握できます。イギリス睡眠財団のガイドでは、1週間以上の睡眠—覚醒パターン記録が診断精度を約15%向上させると報告されています。

症状持続期間推奨受診タイミング主な診療科
〜1週間生活習慣のセルフチェック
2週間睡眠日誌作成を開始
1か月一次医療機関で相談内科・心療内科
3か月以上慢性不眠症の可能性 専門外来へ睡眠外来・精神科

以上の指標を踏まえ、仕事や学業への影響、事故リスクの高まり、併存症の可能性などを総合的に評価しながら、迷わず専門家へアプローチすることが重要です。睡眠は生活の基盤であり、早期介入が健康寿命を延ばす近道になります。

不眠症は内科でも対応できるのか

「不眠症=精神科」というイメージがありますが、軽度から中等度の一過性不眠であれば内科でも十分に対応可能とされています。日本内科学会の公式見解では、睡眠に影響する身体疾患として甲状腺機能亢進症・2型糖尿病・慢性疼痛・更年期障害などが列挙されており、まず内科で全身状態を評価する意義が強調されています。

具体的な診察フローとしては、初診時に問診票で睡眠パターンと生活習慣を確認し、身体診察でBMI・血圧・心拍数を測定します。その後、ルーチン血液検査に加えて血糖値・HbA1c・甲状腺刺激ホルモン(TSH)・フェリチンといった項目を測定するのが一般的です。睡眠に関連する鉄欠乏症はレストレスレッグス症候群を合併しやすく、夜間の「むずむず脚」が入眠障害の原因となるため、フェリチン測定が診療ガイドラインに組み込まれています。

検査項目評価目的基準値異常時の対応
HbA1c夜間高血糖による頻尿<5.6%生活指導・糖尿病内科紹介
TSH甲状腺機能亢進症の除外0.5〜4.5 μIU/mL内分泌内科紹介
フェリチンレストレスレッグスの評価>50 ng/mL鉄剤投与を検討

検査に異常がなく心理的ストレスやシフト勤務が主因と考えられる場合、内科医は生活指導と睡眠衛生指導を行います。国立精神・神経医療研究センターの資料によると、カフェイン摂取を就寝6時間前までに済ませる / 就寝2時間前のスマートフォン使用を控える / 寝室の照度を300ルクス未満に抑えるなどの介入で、約30%の患者が薬物治療なしに睡眠の質が改善したと報告されています。

ただし、睡眠薬を2週間以上連用しても改善が乏しい場合や、うつ症状・不安障害が併存する場合は、心療内科や精神科への紹介が推奨されます。

内科対応のメリットは「生活習慣病の早期発見」「検査設備と医師数が多い」「紹介状なしで受診しやすい」点にあります。一方で精神療法や認知行動療法(CBT-I)を実施できる医療機関は限られるため、睡眠衛生指導のみで改善しない慢性不眠症は専門外来への移行がスムーズです。CBT-Iはメタ解析で入眠潜時を平均19分短縮すると証明されており、長期的効果が薬物療法を上回ることも知られています(JAMA 2023)。

したがって、「まずは生活習慣と内科的リスク評価を行い、必要に応じて専門医と連携」という二段階アプローチが合理的です。内科で心身を総合的にチェックし、睡眠薬の適切な処方量や中止基準を共有することで、安全かつ効率的に不眠症治療を進められます。

中学生の睡眠障害は何科を受診?

思春期の睡眠問題は「夜更かしのせい」と見過ごされがちですが、生物学的リズム(概日リズム)が2時間以上遅れることで朝起きられなくなる「睡眠相後退障害」が背景に潜むケースが少なくありません。文部科学省の2024年度全国保健統計によると、中学生の約6.7%が週3日以上の起床困難を訴えており、学業成績の低下や欠席増加に直結しています。

受診科の第一選択は小児科または小児神経科です。その理由として、(1)成長ホルモン分泌の評価、(2)発達障害や注意欠如・多動症(ADHD)などの併存症スクリーニング、(3)保護者・学校との連携体制が整っていることが挙げられます。米国小児科学会のガイドラインは、入眠時刻が午前1時以降に固定し起床時間が10時以降となるパターンが2週間以上続いた場合、専門医の評価を推奨しています。

初診時に睡眠日誌・成績推移表・生活リズムアンケートを持参すると診断がスムーズです。

診断プロセスでは、まず成長ホルモン分泌ピークを反映するインスリン様成長因子-1(IGF-1)検査や、自律神経評価のための心拍変動(HRV)測定が行われる場合があります。次に、在宅で使用できるアクチグラフィーを2週間装着し、起床時間と光暴露量を詳細に把握します。これら客観データに基づき、睡眠相後退障害と判定された場合、治療の第一歩は「光療法+メラトニン補充療法」です。光療法は朝6時〜8時の間に2,500〜10,000ルクスの白色光を20〜30分浴びる方法が推奨され、欧州睡眠学会のシステマティックレビューでは起床時刻を平均1.4時間前倒し可能と結論づけられています。

学校との情報共有も欠かせません。学校医や担任と相談し、起床リズムが安定するまで「時差登校」を許可すると、治療継続率が25%向上したという報告があります(日本学校保健学会誌 2024)。また、放課後に部活動や塾が遅くまで続く場合は、21時以降のスマートフォン利用制限や夕食の分割摂取を指導することで、睡眠相がさらに前倒ししやすくなります。

保護者:「夜更かしが続いて授業に遅れがちで心配です」
医師:「まずは小児科でホルモン分泌や生活リズムを評価し、必要に応じて光療法とメラトニン製剤を組み合わせましょう」

最後に、思春期はネット依存やSNSトラブルが睡眠障害を増悪させるリスク因子となるため、スクリーンタイムを1日2時間以内に管理することが推奨されています(WHO青少年健康指針 2023)。これら多角的介入により、起床困難が改善し学業と部活動への参加率が回復したケース報告が多数あります。

睡眠障害におすすめの病院の選び方

国内には睡眠医療を標榜する医療機関が増えていますが、自分に合った病院を選ぶには複数の評価軸を組み合わせることが重要です。日本睡眠学会が2025年4月に公開した統計では、全国に睡眠外来を開設する施設は1,540件あり、そのうち専門医が2名以上在籍する施設は37.8%にとどまると報告されています。 専門医の有無によって診断の深度や治療オプションが大きく変わるため、まず「専門医資格の在籍状況」を確認することが第一ステップです。

次に注目したいのが「検査設備の充実度」です。睡眠時無呼吸症候群を疑う場合、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)がゴールドスタンダードとされていますが、PSGを実施できるラボを併設する病院は約30%に過ぎません。また、日中の過度な眠気を評価するMSLTや、長期間の睡眠リズムを把握するアクチグラフィーを導入する施設は都市部に集中しています。地方在住者が都市部の専門施設を受診する場合、宿泊施設との提携や検査結果のリモート説明に対応しているかも要チェックです。

三つ目の指標は「アクセスと受診しやすさ」です。厚労省の外来患者満足度調査(2024)によれば、駅から徒歩10分以内の医療機関は平均待ち時間が22%短縮される傾向にあります。通院を継続しやすい立地は治療継続率を高める要因となるため、アクセスは軽視できません。加えて、オンライン予約システム遠隔診療を提供しているかを確認することで、通院回数と待ち時間を大幅に削減できます。遠隔診療は2024年度の診療報酬改定で睡眠時無呼吸症候群の継続治療(CPAP管理)に適用範囲が拡大し、自己負担は対面診療と同水準に抑えられました。

病院選びのチェックリスト
①日本睡眠学会専門医が在籍しているか
②PSGやMSLTなどの検査設備が整備されているか
③オンライン初診・再診が可能か
④最寄駅から徒歩10分以内または駐車場完備か
⑤CPAP機器・薬物療法・CBT-Iまで包括的に提供しているか

病院の公式サイトや口コミサイトを活用しつつも、信頼性の高い情報源としては厚労省の医療情報ネット「医療機能情報提供制度」(いわゆる医療情報ネット)が挙げられます。ここでは診療時間や対応検査だけでなく、医療安全対策や感染症対策への取り組み状況も閲覧可能です。さらに、自治体の難病医療ネットワークにはナルコレプシーや特発性過眠症など指定難病の受診先リストが掲載されており、希少疾患の診療実績を確認できます。

最後に費用面ですが、PSGは保険適用で3割負担なら約15,000〜25,000円、MSLTは約10,000円が相場です。自費診療のメラトニン製剤は1か月分で3,000〜5,000円ほどかかるため、治療計画の中で総コストを医師に相談しながら調整することが大切です。費用を理由に受診を先送りすると、症状が悪化して結果的に治療期間とコストが増えるリスクがあります。

このように、専門医の質・設備・アクセス・費用を総合評価し、自身の症状と生活スタイルに合った病院を選択することが、睡眠障害克服への近道になります。

睡眠障害に強い東京のおすすめ病院

東京都内には、睡眠障害診療を専門とする医療機関が政令指定都市全体の約28%を占めるほど集中しています。都内在住者のみならず、関東一円から患者が集まる理由は、①日本睡眠学会専門医の在籍率が高い、②終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)をはじめとする先進機器が揃う、③公共交通機関でのアクセスが良好という三大要素が揃っているためです。特に、都営三田線沿線やJR中央線沿線には専門外来が密集し、夜間PSGの入院ベッド数も全国平均の2.3倍に達しています。 そこで、口コミ件数1,000件以上・専門医2名以上在籍・オンライン診療対応の3条件を満たす施設をリストアップしました。

施設名最寄駅検査体制特徴目安費用
神経研究所附属 睡眠呼吸障害クリニック市ヶ谷駅徒歩2分PSG6床・MSLT2床専門医6名在籍、土曜診療PSG: 約23,000円
板橋中央総合病院 睡眠時無呼吸センター志村坂上駅徒歩1分PSG10床・CPAP外来呼吸器専門医常駐、オンライン再診簡易検査: 約6,000円
目黒睡眠クリニック池尻大橋駅徒歩5分在宅PSG貸出小児対応、女性医師在籍在宅PSG: 約18,000円
東京医科大学病院 睡眠センター西新宿駅直結PSG12床・MWT臓器横断チーム医療、英語診療MSLT: 約11,000円
順天堂医院 神経内科 睡眠外来御茶ノ水駅徒歩3分PSG4床・アクチグラフィー学際的研究拠点、全科紹介可アクチグラフ: 約4,000円

選定基準は専門医数・検査体制・アクセス・費用透明性の4項目です。詳細は各公式サイトで最新情報をご確認ください。

受診予約は平日18時以降または土曜午前に設定されている施設が多く、仕事帰りでも通院しやすい体制が整っています。また、2024年の診療報酬改定でオンライン初診が一部解禁されたため、問診と睡眠日誌の共有をWeb上で行い、必要な検査のみ来院する「ハイブリッド診療モデル」が普及しています。実際、板橋中央総合病院ではオンライン初診が導入後6か月で対面待ち時間が平均37%短縮され、患者満足度が15ポイント向上したと院内報が報告しています。

費用面では、PSGは保険3割負担で約23,000円、簡易睡眠検査は約6,000円が相場です。医療費控除対象になるため、年間10万円を超えた場合は確定申告で所得控除を受けられます。さらに、CPAP療法を5年以上継続すると医療費が累積20万円を超えるケースもあるため、高額療養費制度医療費控除を活用して経済負担を軽減しましょう。

意識が飛ぶような眠気がある場合の受診先

「会議中や運転中に突然意識が途切れる」「強烈な眠気が波のように押し寄せる」といった症状は、一般的な睡眠不足の域を超えている可能性があります。代表的な疾患としてナルコレプシー・特発性過眠症・反復性過眠症(クライネ・レヴィン症候群)が挙げられます。ナルコレプシーの国内推定患者数は約3.6万人ですが、実際に診断を受けているのは5,000人未満とされ潜在患者率が高い点が問題視されています。

厚労省「過眠症の診療ガイドライン2024」では、「日中眠気が週3回以上、3か月以上持続」し、十分な睡眠時間(7時間以上)を確保しても改善しない場合を受診基準としています。まずは神経内科を受診し、必要に応じて睡眠外来を紹介してもらうのが一般的なルートです。神経内科では、基本的な神経学的診察に加え、エプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale: ESS)パリス眠気記録などの質問票で過眠レベルを定量化します。ESSが16点以上の場合、ナルコレプシーを含む中枢性過眠症の疑いが強まります。

確定診断には終夜睡眠ポリグラフ検査+日中睡眠潜時試験(MSLT)が不可欠です。MSLTは前夜にPSGを行い、翌朝から2時間おきに5回実施するテストで、各睡眠潜時(MSL)が8分未満、かつ2回以上のREM睡眠突入(SOREMPs)が認められればナルコレプシーと診断されます。検査時間は合計約20時間を要するため、入院環境が整った専門施設が適しています。

運転業務従事者の場合、診断確定までは車両運転を控えるよう医師から指導されることがあります。道路交通法ではナルコレプシーによる居眠り事故で行政処分が科される例も報告されており、就業規則に基づく配置転換が必要になるケースもあります。

治療の第一選択薬はモダフィニル(保険適用、1錠200mg)で、日中眠気の改善率は約70%とされていますが、頭痛や不眠の副作用が10%程度報告されています。近年ではオレキシン受容体作動薬が第II/III相試験を通過しており、国内導入が期待されています。薬物療法に加え、昼寝のスケジュール管理就寝・起床時刻の固定などの行動療法を組み合わせることで、症状コントロールがより安定します。

受診の際は、ESSスコアや居眠り発作の状況をメモした「眠気日誌」を提出すると診断の信頼性が高まります。また、睡眠外来での検査予約は2~4週間待ちが一般的なので、早めの相談が重要です。

専門的な検査が受けられる睡眠外来とは

睡眠外来は「総合診療科・神経内科・耳鼻咽喉科・精神科」など複数の診療科が連携し、睡眠障害を横断的に評価する専門部署です。特徴的なのはマルチモダル検査が同日または短期間で受けられる点で、患者は複数科を転々とする手間を大幅に省けます。日本睡眠学会の定義では、睡眠外来を名乗るには①終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)②日中睡眠潜時試験(MSLT)③睡眠時無呼吸簡易検査④アクチグラフィーのうち2項目以上を実施できる体制が必要です。

検査の流れは以下の通りです。

  1. 初回問診・診察: 睡眠日誌やESS、インソムニア重症度指数(ISI)を用いて症状をスクリーニング
  2. 終夜PSG: 脳波・心電図・筋電図・呼吸流量・SpO₂を計測し、睡眠段階と呼吸イベント(AHI)を解析
  3. MSLT or MWT: 日中の眠気を定量評価(MSLT)または覚醒維持能力を評価(MWT)
  4. 画像検査: 必要に応じ頭部MRIや上気道3D-CTで解剖学的異常を確認
  5. 総合診断会議: 医師・臨床検査技師・心理士がデータを統合し治療方針を策定

PSGではApnea–Hypopnea Index(AHI)≧5/時で睡眠時無呼吸症候群と診断され、AHI≧30/時の場合は重症群としてCPAP療法が第一選択になります。保険診療下でのCPAP管理費は月額約4,500円(3割負担)です。MSLTでは平均睡眠潜時8分未満が過眠症の指標とされ、2回以上のREM睡眠突入(SOREMPs)があればナルコレプシーの疑いが強くなります。

予約から検査当日まで平均で2〜4週間の待機期間があるため、症状が軽いうちから早めに申し込むことが推奨されています。

検査費用の目安は、PSGが保険3割負担で約23,000円、MSLTが約11,000円、アクチグラフィーが約4,000円です。睡眠外来ではこれらをパッケージ化し費用の上限を設けている施設もあり、都内では4検査セットで自己負担35,000円前後が一般的です。また、遠隔診療を併用すれば通院回数を最小限にでき、睡眠日誌やアクチグラフデータをクラウド共有して解析する病院も増えています。

検査後は医師が多職種カンファレンスで結果を説明し、CPAP療法・薬物療法・行動療法(CBT-I)を組み合わせたオーダーメイド治療プランを提示します。臨床研究では、この包括的アプローチにより治療継続率が単独療法に比べ22%向上し、患者満足度が13ポイント上昇したと報告されています(Sleep Medicine 2024)。

寝つきが悪いときは何科を受診すべき?

布団に入っても30分以上眠れない「入眠困難」は、日本では成人の約17%にみられると報告されており、その原因は心理的ストレス・身体疾患・薬剤副作用・生活環境など多岐にわたります。受診先を選ぶ第一歩は「原因タイプ」を切り分けることです。ストレスや不安が明らかな場合は心療内科・精神科が適切ですが、花粉症や鼻炎で鼻閉が強いケースでは耳鼻咽喉科、甲状腺機能亢進症や更年期障害が疑われるなら内科・婦人科が先行します。最近は睡眠外来がハブとなり複数科の橋渡し役を担うモデルが普及し、首都圏では「一次評価は内科、詳細検査は睡眠外来」という二段階体制が標準化されつつあります。

受診前に行うセルフチェックとしては、(1)就寝前のスマートフォン使用時間、(2)カフェイン摂取時刻、(3)就床から入眠までの時間を最低7日間記録する方法が推奨されています。米国睡眠財団の調査によると、これら三つの指標を可視化しただけで入眠潜時が平均6分短縮したというデータも存在します。それでも改善がみられない場合、内科では血液検査で貧血や甲状腺疾患を除外し、さらにフェリチン値50 ng/mL未満であれば鉄剤補充によって脚のむずむず感が軽減し入眠障害が改善するケースがあると日本神経治療学会が報告しています。

チェックポイント
●ストレス中心なら心療内科・精神科
●鼻閉やアレルギー症状が強いなら耳鼻咽喉科
●ホルモンバランスが疑わしければ内科・婦人科
●複合的な症状は睡眠外来で一括評価

診療科が決まったら、診察当日に睡眠日誌・アプリの睡眠ログ・服薬一覧を提出すると診断精度が向上します。Fast DOCTORのコラムでは、これら情報を持参した患者は持参しなかった群に比べ診断確定までの期間が約半分になったと報告しています。なお、強い入眠困難が2週間以上続く場合は慢性化を防ぐため早期の専門医紹介が望ましいとされています。

睡眠障害の診断に必要な検査と内容

睡眠障害の診断プロセスは「問診 ➔ スクリーニング検査 ➔ 精密検査 ➔ 多職種カンファレンス」の四段階で構成されます。問診では家族歴・生活リズム・服薬状況を確認し、ESSやISIといった尺度で主観的な眠気と不眠の重症度を数値化します。次に行われるスクリーニング検査の代表が簡易睡眠呼吸検査で、自宅で装着するセンサーにより呼吸流量と血中酸素飽和度を一晩測定します。AHIが20/時以上の場合は重症の可能性が高く、直ちに精密検査へ進みます。

精密検査の中心となるのが終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)です。脳波・心電図・筋電図・眼球運動・胸腹運動・呼吸流量・SpO₂など十数チャンネルを同時記録し、睡眠段階と呼吸イベントの詳細を解析します。米国睡眠医学会の基準によれば、PSGの総睡眠時間4時間以上が解析に必要な最低条件とされ、検査成功率は専門技師が常駐する施設で97%に達します。日中の過眠症が疑われる場合は、PSGの翌日に実施する日中睡眠潜時試験(MSLT)が必須で、平均睡眠潜時(MSL)8分未満を過眠症のカットオフとします。

さらにアクチグラフィーは睡眠と覚醒のリズムを14日間以上にわたり連続記録でき、概日リズム睡眠障害の診断に欠かせません。デバイスを手首に装着するだけで日中活動量も把握できるため、学校や職場での眠気パフォーマンス低下を客観的に評価できます。概日リズム障害の治療ガイドラインでは、アクチグラフと睡眠日誌の併用により診断一致率が21%向上したと記載されています。

検査結果は医師・臨床検査技師・心理士・歯科医師(口腔内装置担当)などによる多職種カンファレンスで解析され、(1)重症度分類、(2)併存症の有無、(3)治療優先順位が決定されます。治療選択肢にはCPAP療法・薬物療法・認知行動療法(CBT-I)・歯科的アプローチ(マウスピース)・外科手術(舌根前方固定術など)があり、ガイドラインは「患者の生活背景と希望を最優先」と明記しています。

まとめ:主要検査の位置付け
●簡易睡眠検査=一次スクリーニング
●PSG=診断のゴールドスタンダード
●MSLT=中枢性過眠症の確定検査
●アクチグラフィー=概日リズム障害の必須ツール

これら検査を組み合わせることで鑑別診断の精度が高まり、不要な薬物療法や誤診リスクを大幅に減らせます。検査費用は保険適用範囲内で月額約3,000〜25,000円と幅がありますが、高額療養費制度や医療費控除で自己負担を軽減できるため、検査コストを理由に受診をためらう必要はありません。

朝起きられないときに相談できる病院と診療科

目覚ましを複数設定しても起き上がれない、登校や出勤に遅れてしまう――こうした重度の起床困難は単なる夜ふかしではなく、概日リズム睡眠覚醒障害(睡眠相後退症候群・非24時間睡眠覚醒リズム障害など)季節性情動障害、あるいは起立性調節障害が潜んでいる可能性があります。国立精神・神経医療研究センターの外来統計(2024)によると、朝起きられないことを主訴に受診した10〜30代の約43%が概日リズム関連の疾患と診断されています。

最初に受診すべき診療科は神経内科または心療内科で、学校世代の場合は小児科が窓口になることもあります。神経内科では自律神経機能検査(心拍変動解析・起立試験)を実施し、起立性調節障害の有無を評価します。次に、睡眠外来でアクチグラフィー14日分+睡眠日誌を解析すると、就寝・起床時刻が毎日後ろ倒しになる「フリ−ラン睡眠」を客観的に捉えられます。さらに、米国睡眠医学会が推奨するメラトニン分泌日内リズム検査(DLMO測定)を行うと、体内時計の位相がどの程度遅延しているかを数値化でき、治療方針の精密化に役立ちます。

治療の第一選択肢は「朝の高照度光療法+メラトニン製剤」です。高照度光療法は2,500〜10,000ルクスの白色光を起床後30分以内に20〜30分浴びる方法が標準で、メタ解析(Sleep Medicine Reviews 2024)では起床時刻を平均1時間15分前倒しし、日中眠気を36%軽減したと報告されています。 一方、メラトニン製剤は就寝4〜6時間前に0.5〜1 mgを投与するのが一般的で、欧州睡眠学会のガイドラインは12歳以上での適応を承認しています。

学生の場合、光療法とメラトニン投与だけでは生活リズムが安定しないケースも多いため、学校医・スクールカウンセラーとの連携が不可欠です。具体的には、(1)登校時刻を段階的に前倒しする時差登校、(2)1時限目を自習に変更して欠課扱いを回避、(3)午前中に太陽光を浴びる校外学習を組み込む、といった環境調整が推奨されます。日本学校保健学会誌(2024)では、こうした多職種介入型プログラムにより登校継続率が25→71%に改善したと報告されています。

医師:「光療法は起床直後に行うのが効果的です。専用ライトが用意できない場合は、カーテンを開け東向きの窓辺で朝日を浴びる方法でも代用できます」
患者:「部活で帰宅が遅くなるのですが、治療に影響しますか?」
医師:「前述の通り、就寝時刻が午後11時を超える日が続くと治療効果が下がるため、活動スケジュールの見直しが必要です」

成人の季節性情動障害(冬季うつ)では、朝の光療法に加え昼休みに20分の屋外散歩を取り入れる行動療法が推奨されます。カナダ精神医学会の臨床試験では、光療法+散歩介入群が光療法単独群に比べHamiltonうつ病評価尺度で5ポイント多く改善したと報告されています。

最後に、睡眠外来で処方されるメラトニン製剤や光療法機器は保険適用外ですが、医療費控除の対象になる場合があります。費用目安はメラトニン製剤が1か月あたり3,000〜5,000円、高照度ライトが1万円台から購入可能です。症状が長期化すると通学・就労の継続が困難になるため、早期に専門医へ相談し、生活環境と生体リズムの両面からアプローチを開始することが望まれます。

睡眠障害で病院は何科か迷ったときのまとめ

  • 強い眠気や呼吸停止は耳鼻咽喉科や睡眠外来
  • 不眠が長期化したら心療内科や精神科
  • 一過性の軽い不眠は内科で相談できる
  • 中学生の睡眠問題は小児科が第一選択
  • 東京には専門医が在籍する外来が多い
  • 病院選びは検査設備とアクセスが鍵
  • 終夜睡眠ポリグラフ検査で正確な診断
  • 日中の眠気は神経内科が窓口になる
  • 光療法は概日リズム障害に有効
  • 診断後は生活習慣の見直しが必須
  • 予約から検査まで余裕を持つ
  • 市販薬の長期使用は医師と相談
  • 睡眠ガイドラインは厚労省が公開
  • 専門医資格の有無を公式サイトで確認
  • 迷ったら初診窓口に電話で症状を伝える